子どもを育む構音指導の実際

☆指導者の心得とこどもの理解〔PDF〕

『ことばの教室の指導と運営 山形県言語障害児教育研究会 2002 p50-80』からの抜粋

☆構音障害の理解とその指導〔PDF〕

『ことばの教室の指導と運営 山形県言語障害児教育研究会 2002 p81-95』からの抜粋

ぷろろーぐ 側音化構音の早期改善・早期指導終了を目指す構音指導

● 構音指導への基本スタンス ●
自分が親ならと考えてみませんか

構音への様々な指導法を10でも、100でも知っていてもいいのです! でも、知っていることが大切なことではないのです。
大切なのは、今目の前にいるお子さんについて「早期改善・早期終了を目指す構音指導」の観点から指導方法を選択し、実際に指導することができることです。
側音に限らず、誤り音のある幼児の親御さんなら「幼児であっても、指導し、入学までには正音に改善してくれる指導者』を探すのではないでしょうか?

“子どもを育む構音指導”とは、どのような指導のことなのでしょう?

指導が終了し、いよいよお別れの時、以下のような様子に遭遇できれば、“子どもを育む構音指導”になっていたと、密かに喜んで良いのではないかと思うのです。
●側音化構音であっても、“構音が直った上に”明るくなってお友達もできた。教室で手を挙げるようにもなった
●側音化構音であっても、“構音が直ったばかりか”、私(母親)の話(悩み)も聞いてもらえた
親御さんからの言葉の“key Word”は、『発音(構音)が直った』だと思うのです。そして、この言葉の後に、「直った上に」「直ったばかりか」が続くのです。
このような結果が得られる指導を“子どもを育む構音指導”と呼びたいのです。

参考にしたい指導ビフォーアフター や 親御さんの手記

Aa ほとんどの発語を理解することが難しかった年長男子まさと君(仮名)の構音指導のビフォーアフター【動画】

Ab 「でも、今は、しゃべれるからいいよねー」「あーしゃべれるようになってよかった」とつぶやいた年長男子まさと君(仮名)の母親の通室しての感想〔PDF〕

Ba [オ]列の音が、聴覚的に「ん」に聞こえる構音の誤りのある年中児としおさん(仮名)の構音指導のBefore-After【動画】

Bb 目標は『小学校入学前までに発音を直す!』こと:年中児としお(仮名)さんの母親の通室しての感想〔PDF〕

C “鼻咽腔閉鎖機能”に問題のない小学3年男子大和君(仮名)の声門破裂音への構音指導のBefore-After【動画】

D 不規則な発音の誤りを示した小学3年俊輝さん(仮名)の初回検査及び通室26回目でのことばの様相【動画】

E [エ]列の構音も側音化構音になる年長児とみおさん(仮名)の[エ]列側音化構音に対する構音指導のBefore-After【動画】

Ⅰ 機能的構音障害としての「構音の誤り」に対する『構音(点)指導 = 音づくり』の基本

構音指導全般の基本〔側音化構音への指導も含む〕
構音(点)指導の基本 = 幼児から成人までの構音(点)指導の『基本』は同じ

①構音指導の際の「誤りの自覚がない」「直す意欲もない」は、指導の難易度とは、無関係です。むしろ、幼児からの指導の方が、側音化構音であっても、容易なのです
②正音と誤り音の聴覚的差異の大小は、指導の難しさの理由には、なりません
③『練習として、50回“側音の[チ]”を言わせれば、“側音の[チ]”の練習を50回させたことになり、さらに強固な“側音の[チ]”を習得させることになる』と心得ましょう!
④構音運動の反復練習の量が、正音を会話に般化させる唯一の方法ではありません

参考:難治性構音障害の的確な診断と効果的な指導のあり方 第14回全難言協東京大会発表資料1985〔PDF〕

参考:構音障害児の指導あれこれ―難治性構音障害の的確な診断と指導のあり方『補足』- 山形県言研研究集録第15号1991〔PDF〕

参考:構音指導における『構音の改善』に関わるいくつかの要因について―指導事例を通して-〔PDF〕

※ 側音化構音への指導であっても、10~25回前後の通室で、キチンと改善した上で終了することが多く、反復練習の量は決定的な要因ではありません
⑤側音化構音であっても、口腔内の図を用い、舌の動かし方等を指導する必要は、全くありません
⑥指導を始める際の「今から、チの練習を始めます」等の挨拶は、してはいけません
このような文言での指導開始だけで、側音の[チ]を誘発することになるからです。そもそも、構音指導の本質は、国語や算数のような学習ではありません。
⑦指導を始める際の「私(指導者)が、[チ]と言いますから、あなたも同じように、[チ]と言って下さい」などの指示は、誤り音の構音運動を誘発し、構音指導の阻害要因になります
⑧鏡の使用は、どの年齢においても必要ありませんし、特に幼児には、用いないようにします

= 構音指導全般 = ⑤から⑦までの理由

構音運動は、ある言葉を言おうとした瞬間には、発語者の意識とは関係なく構音運動が始まります。つまり、例えば、側音化構音 [tʃi] の構音の場合であっても「ち」を言おうとしたその瞬間には、側音化構音「ち」の構音運動は、すでに始まっているのです。
ですから、口腔内の図を用い舌の動かし方を前もって説明する行為は、誤り音(例えば、側音化構音)になる運動を誘発しておいて正音の構音運動を導こうという矛盾した行為を要求することになるのです。
従って、当然、正音の構音運動を、自覚的に導き出すことは、かなり難しくなるのです。
参考:早期改善を目指す構音指導のプログラム(基本)【PDF】

Ⅱ 側音化構音に対する指導の基本

※構音(点)指導の基本 = 幼児から成人までの構音(点)指導の基本は同じ
※側音化構音の指導・治療は、他の構音の誤り方への指導・治療に比べて特に難しい訳ではありません。特段の違いは、ありません
①側音化構音に対する指導でも、舌の体操や舌を平らにするなどの指導は全く必要ありません
[ⅰ] に側音化構音が認められても、 [ⅰ] から指導する必要はありません
③側音化構音と置換が混在する場合、側音から指導することで、早期終了が見込めます
④多くの構音に側音化構音が認められる場合、 [tʃi] から指導を始めることで、早期終了が見込めます

= 側音化構音に対する指導 = ①の理由

んか」の[ke]を[te]と構音しようと、[側音のke]と構音しようと、指導として目指す[ke]の構音運動は、同じ構音運動の[ke]のはずです。
仮に、「舌の生理学的病理学的な原因」で、①側音化構音になるのであれば『機能的構音障害』とは言えませんし、②側音化構音[ke]の構音動態が示すように、/k/ の構音運動の開始から「舌が膨らんでくる・額が偏位する」のであれば [keNka]の /ka/も側音にならなければなりません。つまり、[keNka]の発語の際、[ke]のみに側音化構音が生じるのであれば、「舌の生理学的病理学的な原因」で生じている訳ではないといえるのです。
そもそも、舌そのものに「生理学的病理学的な原因」があるのであれば、発語全体が不明瞭になるはずです。でも実際は、側音化構音になる構音以外は、実に明瞭なのです。
また、「んか」の[ke]と[ka]の/k/の構音運動は、全く同じ運動なのです。ですから、/k/ 自体に構音運動としての問題は、全くないのです。従って、『舌の体操』や『舌を平らにする指導』の必要は、無いと考えられるのです。それでも「構音に関わる筋力」を鍛えたい方には、MFT をお勧めします。MFT だけでも歯間音の改善が期待できます。

Ⅲ 側音化構音障害の理解・指導(治療)に関するレポートや論文の紹介

●構音と随意運動機能の関係についてⅡ〔PDF〕

●イ列構音障害の改善に要した時間とその要因について〔PDF〕

●イ列構音障害の改善に要した時間とその要因 ―児童事例を通して―〔PDF〕

●難治性構音障害の的確な診断と効果的な指導のあり方 第14回全難言協東京大会発表資料1985〔PDF〕

●就学児の構音検査における側音化構音の実態 -側音化構音障害の自然治癒について-〔PDF〕

●側音化構音のprevalnceに関する研究 国立特殊教育総合研究所研究紀要 第16巻〔PDF〕

●構音障害児の指導あれこれ―難治性構音障害の的確な診断と指導のあり方『補足』- 山形県言研研究集録第15号1991〔PDF〕

●構音指導効果の般化の様相と構音指導プログラムについて―側音化構音障害の構音指導を中心に-〔PDF〕

●低年齢児の『誤り構音』への指導―側音化構音への指導は、難しいわけじゃない-〔PDF〕

●機能的構音障害としての『側音化構音』になる子の指導 -その1-『側音化構音』の理解と子供の指導のあり方〔PDF〕

●機能的構音障害としての『側音化構音』になる子の指導 -その2-高学年児童の指導から〔PDF〕

●幼児側音化構音障害児の構音点指導 日本特殊教育学会 第41回大会発表論文 2003

●側音化構音の指導の必要性とその適時性に関する考察 ―同じ側音化構音が認められる母親と子供の構音指導から -〔PDF〕